取扱い薬及び、自然薬の処方

糖鎖栄養素の働き

糖鎖(とうさ)は,糖尿病・アトピー、血液型や受精に関係するだけでなく、インフルエンザの感染やガンの転移など様々な病気の原因に関与しています。

糖鎖とは?

ゲノム解読完了後、「ポストゲノム」として生命科学分野で注目されているのが「糖鎖」です。4文字でできた単純な暗号であるDNAよりも、複雑な情報をもつ糖鎖は、研究がむずかしいようです。しかし糖鎖は私たちの血液型や受精に関係するだけでなく、インフルエンザの感染やガンの転移など病気のメカニズムにもかかわっていることがわかってきました。

谷口直之 大阪大学大学院医学系研究科教授の研究によって、これまで分からなかった生命現象が明らかになりつつあります。

自然治癒力や免疫力を発揮するには、全ての細胞が元気で正常に働いていなくてはなりません。「この細胞同士をつなげているのが、糖鎖なのです。」
この様な細胞同士の情報交換を、細胞間コミュニケーションと呼んでいます。

五大栄養素から六大栄養素へ

今までは、栄養といえば五大栄養素、すなわちビタミン・ミネラル・脂質・タンパク質・炭水化物でした。その中でも炭水化物は、糖質栄養素としてひとからげにされていました。
しかし糖鎖というものの重要性が明らかになり、糖鎖を形成する物質としての糖質、すなわち糖鎖栄養素の存在がわかった今、炭水化物を炭水化物と糖鎖栄養素に分けて、六大栄養素とする考え方が主流となりつつあります。

糖鎖栄養素とは?

糖鎖で重要視している糖はエネルギー源になる炭水化物と区別する為、個人的に、糖鎖を形成している8種類の単糖類を特に「糖鎖栄養素」と名付けています。

糖鎖栄養素とは?

糖質栄養素と言うと、炭水化物全てを含んでしまい、また甘い糖と思われがちで、正しい理解がされません。糖鎖で重要視している糖は、グルコース・ガラクトースも含みますが、糖鎖を形成している8種類の単糖類です。そこで、エネルギー源になる炭水化物と区別する為、個人的に、糖鎖を形成している8種類の単糖類を特に「糖鎖栄養素」と名付けています。

8種類の単糖類

グルコース・ガラクトース・マノース・キシロース・フコース・Nアセチルグルコサミン・Nアセチルガラクトサミン・Nアセチルノイラミン酸

グルコース(ブドウ糖)とガラクトース(乳糖)は食品から充分に摂ることが出来ます。残りの6種類も微量ですが、自然の植物にも含まれています。その他、実は糖質栄養素の大半は、主にグルコースを元にして、肝臓で作られているのですが、残念ながら、食品を含む環境の悪化や、様々なストレスにより発生する、活性酸素で、この作業が阻害されてしまいます。

今、糖鎖を整えるには、口からこの糖鎖栄養素を充分に補う以外に方法がありません。今までは、炭水化物や糖質は、体内に入ると全てグルコースに変換されてしまい、この糖鎖栄養素は体内合成しか方法が無いと考えられていたのですが、最近の研究で明らかになってきたのは、口から入った糖鎖栄養素はそのままの形で、部品として必要な部分に運ばれて行くということなのです。

このノーベル賞に値すると言われている素晴らしい発見をしたのは、アメリカのビル・マッカナリー博士とそのチームです。 又、1999年それを裏付けるような研究が、ノーベル生理学医学賞を受賞しました。それはドイツのギュンター・ブローベル博士の理論で、「必要に応じて運搬したり、配置したりする言わば郵便番号のようなシグナルを持ったタンパク質の発見」です。

糖鎖の働き—1

免疫機能に必要な情報を得る働き

免疫細胞は白血球の中のリンパ球にあります。一つにはマクロファージとNK細胞で、これは自然免疫系と言って、絶えず血液中にあって外敵と戦っています。マクロファージは食べて排除、NK細胞は殺して排除します。もう一つはキラーT細胞で、これは獲得免疫系と言って、必要に応じて出動します。免疫機能で一番始めにすることは、血液中に進入してきたものがいったい何者なのかを糖鎖の先端が触れることで、そのものの情報を得ている。

糖鎖の働き—2

遺伝子の修復というシステムの重要な命令をする

自然免疫系つまり、マクロファージとNK細胞で処理出来ますが、手におえないとキラーT細胞に命令を下し、異物と認識して攻撃します。このも糖鎖を通して行われます。
この様な細胞同士の情報交換を、細胞間コミュニケーションと呼んでいます。

糖鎖の働き—3

異物を排除した後は、攻撃中止命令を出す

異物を排除した後は、攻撃中止命令を出しますが、キラーT細胞に命令が伝わらなかったり、その他の理由で免疫細胞が勝手な行動をして、自分自信の正常な細胞を攻撃してしまうのが、リュウマチ・アレルギー・アトピー・喘息・関節炎・糖尿病・甲状腺障害などの、自己免疫疾患で、これまでは、免疫細胞の異常が何故起るのかが、解っていなかったのですが、糖鎖の異常で情報交換が充分に行われないことで、免疫細胞が勝手な行動をしてしまっている可能性が非常に高いと推測されています。

糖鎖の働き—4

Ⅱ型糖尿病でのインスリンを糖鎖(ホルモンレセプター)により、情報をよみとる
膵臓でインスリンが作れないⅠ型糖尿病(インスリン注射を打っている)

Ⅰ型糖尿病の原因の一つに、自己免疫疾患があります。膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞を、自分の免疫細胞が攻撃してしまう病気です。何故そのようなことが起こるのか、原因不明でした。このような免疫細胞は、自己と非自己の認識が出来なくなっています。それは、糖鎖の異常で情報交換が充分に行われないことで、免疫細胞が勝手な行動をしてしまっている可能性が非常に高いのです。インスリンがあっても働かない。

Ⅱ型糖尿病

細胞表面にはホルモン受容体というものが存在し、インスリン受容体に受け入れられて始めて細胞表面のチャネルが開き、グルコースが細胞内に取り入れられます。インスリン受容体の異常で、グルコースが細胞内に取り入れられず血糖値が高くなっている可能性がいわれています。
このホルモン情報を受け止める受容体(レセプター)も糖鎖なのです。

糖鎖の働き—5

受精の精子が卵子に出会い受精するときも、糖鎖がかかわる

卵子表面は卵子を保護する「卵黄膜」に覆われています。
受精するためには精子がこの膜を突破して卵子までたどりつかなければなりません。精子は、卵黄膜表面にでた独特な糖鎖と結合することで卵黄膜を突破し、受精することができます。不思議なことに人工的に卵黄膜をとりさった卵子に精子をかけても受精しないといいます。糖鎖を介したコミュニケーションは必須条件であるようです。

糖鎖の働き—6

脳の情報処理において、糖鎖がかかわっています

ヒトの脳では、数千億個の神経細胞が神経回路を形成して、情報を処理しています。情報は神経細胞の中を電気信号として伝わりますが、神経細胞だけでは速度が遅くなります。そこで、神経細胞には、オリゴデンドロサイト(グリア細胞の一種)がきつくまきつき、絶縁体をつくることで、高速の情報伝達を実現しています。この「髄鞘」とよばれる構造をつくりだすのに、糖鎖が必要といわれています。糖鎖がないと、オリゴデンドロサイトがきつく巻きつけずに、完全な絶縁体をつくることができなくなります。それではすばやく情報を伝えられなくなってしまいます。この髄鞘形成にかかわる糖鎖をつくれないように遺伝子を改変したマウスは、ふるえや運動失調があらわれ、すぐに死んでしまうと報告されています。

糖鎖の働き—7

糖鎖が肺気腫の直接の原因に!!

谷口教授らのグループは、ある特定のタンパク質に結合する糖鎖が欠損すると、マウスが「肺気腫」を発症することを明らかにしました。( 2005年10月アメリカ科学アカデミー紀要に発表)。谷口教授は「糖鎖遺伝子(糖鎖を付加する酵素の遺伝子)を欠損したマウスをつくったところ、マウスにはさまざまな病気があらわれました。どのタンパク質に結合している糖鎖の欠損が、体のどのはたらきに影響をあたえて、疾患がおきるかというメカニズムを証明され、今後の治療に期待が膨らみます。

糖鎖の働き—8

がんの転移にもかかわる

糖鎖のはたらきが急速に解明されている疾患が、ガンである。がん化した細胞には、特殊な糖鎖があらわれることが知られています。「肝臓がん」「すい臓がん」などガンの種類によって、ちがう糖鎖があらわれます。そのため、ガンかどうか、どのようなタイプのガンか、ということを調べるために、糖鎖は「がんマーカー」として実際の検査ですでに利用されています。さらに糖鎖は、がんの性質にもかかわることがわかってきました。転移しやすい、いわゆる悪性のガンでは、“悪玉”の糖鎖が出現するといいます。悪玉糖鎖があると、がん細胞は病巣で密集しにくくなります。つまりガン細胞どうしがはなれやすく、血液に流れでるがん細胞が多くなります。また悪玉糖鎖は、血管壁(内皮細胞)にくっつきやすい性質ももつといいます。血管についたがん細胞は、血管壁をやぶり、組織の中に侵入します。これによって、もとの病巣とはことなる場所にがんが転移することになります。
この転移しやすいがんを、糖鎖の形をかえることで、転移しにくくする研究が行われています。マウスの実験で、がん細胞の悪玉糖鎖に糖鎖を一つ追加して、糖鎖をいわば“善玉”にかえ、がん細胞の性質をかえることに成功しています。善玉糖鎖になると、まず病巣でがん細胞どうしが結合しやすくなります。きっちり密に結合することで、血液中にがん細胞がもれにくくなります。もし血管中に入ったとしても、血管にくっつきにくい性質をもつため、ほかの組織に侵入することが少なくなるのだといいます。この悪玉糖鎖は、ヒトの皮膚ガンや胃ガン、乳ガンなどであらわれていることがすでにわかっています。そのため、糖鎖を改変することで、ヒトのがん転移の薬開発につながるかもしれません。

糖鎖の働き—9

ウイルスは感染と脱出に糖鎖を利用する

ウイルスは細胞の糖鎖をターゲットにして、感染をこころみる。インフルエンザウイルスや、エイズウイルスなど、それぞれウイルスによってねらう糖鎖はちがうが、糖鎖を認識することで細胞に侵入、感染する。糖鎖とウイルスが結合しなければ、感染はおこりません。2005年、WHO(世界保健機構)は、新型インフルエンザの大流行のおそれがあると、注意をよびかけました。インフルエンザの予防接種は、ウイルスの細かい変化に対応できないため、効き目が弱くなることもあります。そのため、多くの型に効くインフルエンザの治療薬の開発は非常に重要であります。
インフルエンザウイルスは、細胞表面の糖鎖と結合するHA(ヘマグルチニン)と、同じ糖鎖をばらばらにするNA(ノイラミニダーゼ)という2種類のタンパク質をもっています。細胞に感染する際には、HAが糖と結合することで細胞の中に入ります。では、細胞感染に必要なはずの糖をはずしてしまうNAを、なぜインフルエンザウイルスはもっているのだろうか。それは、ウイルスが細胞の外に出るときに重要になるからです。ウイルスは感染した細胞の細胞膜をまとって外にでます。その際に、糖とHAが結合してしまうと、凝集して外に出にくくなってしまいます。NAはそれを防ぐ役割をしています。
インフルエンザの治療薬タミフルは、インフルエンザウイルスのNAのはたらきをおさえ、感染した細胞からウイルスが外に出るのを防ぐ薬です。患者の体内でウイルスの感染が広がらないようにする効果があります。さらに感染の拡大をおさえるために、HAとNAの両方に結合し、そのはたらきをおさえるという化合物も報告されています。これは、新たな感染を防ぎ、さらに感染してもウイルスが細胞の外に出ないようにするという。しかもこの効果は、ウイルスの型によらないらしい。もし治療薬となれば、新型ウイルスにも対応できるかもしれません。

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