呼吸のトレーニングはとても大切です。なぜなら、呼吸の仕方によって、神経系に影響を与え、心拍数、血圧、血液循環、消化を調節することができるだけでなく、呼吸に働きかけること、リズム、深さを意識的にコントロールすることができれば、精神性、霊性のトレーニングにもなるとされています。つまり、呼吸のトレーニングによって、病気には、不可欠である命、活力の源を得て、治癒系を整えることができるとされています。
私たちは、当然、物ではなく、生命として生きています。生きていることは、呼吸をしているということです。いのちと活力の源である「スピリット」と「呼吸」が同じ言葉であらわされる言語が数多くあります。具体的には、サンスクリット語は「プラーナ」ギリシャ語は「プネウマ」、ヘブライ語は、「ルーアッハ」ラテン語は、「スピリトゥス」が、その両者を表します。そして数多くの文化の中で、命は、最初の呼吸ではじまり、最後の呼吸で終わると考えられています
意識的な呼吸の科学は医学校では教えていません。それは長い間奥儀として口伝で伝えられてきたものですが、今日では一部の本などでも学べるようになりました。
ゆらぎ
最近、扇風機などにゆらぎ、というスイッチをよくみかけます。ゆらぎとはなんでしょうか?
まさに我々の存在の中心点には、リズミカルな運動があります。心と体の中に意識と無意識の中に、膨張と収縮のサイクルがあります。同様に、一日は夜と昼を繰り返し、意識は覚醒と睡眠を繰り返し、海は満ち潮と引き潮を繰り返し、季節は盛夏と厳冬を繰り返し、この現実を構成するすべてのレベルに、この宇宙のあらゆる側面に、ふたつの局面のあいだを往復するリズミカルな膨張と収縮のサイクルがあり、このことをゆらぎといいます。海の波の音をきいているとリラックスできるという方が多いでしょう。
それと同様に、呼吸のトレーニングは、宇宙のゆらぎに同調することができ、それにより、ホルモンの日内変動(一日の中でも朝と夜ではホルモンの分泌の仕方が違います。)などのリズムをとりもどし、自律神経を安定させ、恒常性を高めることができます。
呼吸のトレーニングは、霊性を高めるための訓練
中国医学、インドのヨガで呼ばれている気、プラーナなどは、宇宙に遍在する生命エネルギーであり、それに触れると、痛みを和らげたり、治癒を促す力がそれにあり、また、またそれらは、意識を物質界から精神世界へと転換させて、自己はエネルギーとして経験できるようになるとされています。
霊性、精神性の先達たちは、霊的なエネルギーを高めること、精神の波動の周波数を高めることは可能だと教えています。そのための方法のひとつは、自己を霊的、精神的エネルギーの高い場所、高い人、高いもののそばに置くことです。世界中で、何百万人という人が聖地、山・森・神殿・寺院などに巡礼し、そこで高揚感を味わい、元気をとりもどし、蘇生しています。すばらしい音楽を聴いたり、美しい花を活けたり、自然の美に接することでも精神が自我から解放され、思考がより高い目的にむけられることができます。
呼吸法は同様に、自宅でも、トレーニングによって、これらのエネルギーを高めることができ、単なる健康増進法という観点だけでなく、霊性を高める訓練として是非ともとりいれていただきたいものです。
実際のトレーニング
1. 心、身、霊の調和の基本(リラクゼーション法、瞑想法)
楽な服装、楽な姿勢で座り、目を閉じる。そして、ただ呼吸に注意を集中して呼気から吸気に変わる瞬間、吸気から呼気に変わる瞬間を見届けます。これを最低数分行います。
2. 呼吸を深くするトレーニング
呼吸のサイクルを呼気からはじまり吸気で終わるということを意識します。呼吸を深くするためには、呼気で、肋骨の間の肋間筋を使い、より多くの空気を吐き出し、吸気のことは何も考えないというトレーニングをします。
3. 治癒効果を高める呼吸法(朝日瞑想法)
仰向けに寝て、目をとじて、両腕は体の脇に。(すがすがしい朝日のオレンジ色の光があたる大自然の中でたったひとりで寝そべっていることをイメージします。)呼吸を変えようとせずに呼吸に注意を集中します。そして息を吸うたびに、オレンジ色の朝日が頭のてっぺんからはいってくるようにイメージし、息を吐くたびに、宇宙が自分から息を吸い込んでいるとイメージします。息を吸い込むたびにオレンジ色の朝日が頭のてっぺんから背骨を降りて、体全体にひろがり、手足の指先や、つま先にまで浸透していくことをイメージします。
これを10回、10分を限度に行い、毎日頻繁に続けるといいです。
4. 中枢神経系を活性化させる呼吸法
午後のひととき、疲れたとき、運転中眠くなったとき、元気がでる呼吸法です。背筋を伸ばして楽に座り、目を閉じます。舌先を前歯の裏側に軽くすけ、そのまま上方にずらして前歯の付け根のくぼみ(歯槽隆線)におさめます。(ヨーガの思想では、このことで、体のエネルギー回路が閉ざされ、呼吸訓練中にプラーナをためこむことができるとされています。)
そして、大きく息をすって、口を軽く閉じたまま、鼻から勢いよく吐き出します。呼気と吸気は同じ長さで、周囲に呼吸音が聞こえるくらい勢いよくし、無理がなければ1秒に3回くらいの過呼吸を15秒続けます。なれてくれば、20秒、25秒と少しずつ、過呼吸の時間を増やし、1分続けるようになるといいでしょう。
鎖骨上部の筋肉と横隔膜が緊張と弛緩を繰り返し、胸の筋肉の疲れを感じ、終わったあとには体の中に微細なエネルギーや、ほてり、活力を感じ、同時に意識が変容し、疲労が解消していくことがわかるようになってきます。
5.くつろぎ呼吸
不安や、感情的動揺を感じそうになったとき、また、毎朝、毎晩眠る前に2回行うと効果があります。瞑想をする方は瞑想の前にもいいでしょう。消化不良、高血圧、不整脈、不眠などにも効果があり、スピリチャルな強心剤としておすすめいたします。
背筋をのばした座位でも、仰向けに寝ても、立位でも歩行中でもできる呼吸法です。まず、舌をヨーガの所定の位置におさめて、練習が終わるまでそのままにしておきましょう。まず、息を思いきり口から息を吐ききります。まるで溜息のように吐くときに音が聞こえるきらいに吐ききります。次に口を閉じて鼻から静かに息を吸いながら、こころの中で4つ数えます。次に息をとめたまま7つ数えます。そして、溜息のように音をたてながら、8つ数える間に口から息を吐きます。一回に1クールから8クールへと慣れてくれば少しずつ増やしていきましょう。吸気、保持、呼気を4対7対8の比率で行うことが重要で呼吸の速さはあまり気にしなくてもかまいません。