心と身体の健康のための養生法・まめ知識

トランス脂肪酸の危険性

トランス脂肪酸の代表は、 マーガリン、ショートニング、有機溶剤を使って抽出した食用油

マーガリンは19世紀末にナポレオンがバターの安価な代用品の開発に懸賞をかけて、そしてできたものだといわれています。原料は普通の植物油ですが、これだと常温では液体で固まらないので、水素を付加して、つまり人工的に油脂を変化させて作っているのがマーガリンです。そして、この「人工的な水素付加」というものが、マーガリンの中に普通では自然には存在しない「トランス型脂肪酸」というものを作り出します。

また、トランス脂肪酸は、マーガリンに含まれるだけでなく、植物油由来のショートニングや、それらを使ったパンやお菓子にも含まれます。また、今日では普通の植物性の食用油を有機溶剤を使って抽出することが多くなっていますが、この方法では抽出温度が高くなり、トランス脂肪酸が増えることになります。昔ながらの圧搾による製法の植物油のほうがいいと思われます。

左は正常なシス脂肪酸(上)と異常なトランス脂肪酸(下)
 基本的にトランス脂肪酸は自然に存在されないものなので体の中に消化・代謝・排出のメカニズムがありません。脂肪は単に、エネルギー源として使われるだけでなく、細胞の重要な構成要素で細胞膜を形成します。トランス脂肪酸のような異物が多く存在すると細胞レベル・分子レベルで多くの支障をきたすと指摘されています。

各国のトランス脂肪酸の規制の現状

日本ではほとんど問題にされていない、このトランス脂肪酸ですが、海外では以前からその危険性が問題視されています。各国のトランス脂肪酸の規制の状況は、

  • オランダ トランス脂肪酸を含む油脂製品を販売禁止
  • デンマーク ある限度以上のトランス脂肪酸を含むものは禁止
  • アメリカ合衆国 2002年7月、食品医薬品局(FDA)などからの要請により、医学会はトランス脂肪酸の摂取に関するレポートを発表し、トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させることから、心臓病のリスクが高まると報告している。これを受けて、FDAは食事中のトランス脂肪酸摂取量を総摂取エネルギーの1%以下にするよう勧告しており、2006年1月から食品中のトランス脂肪酸含有量の表示を義務化している。
  • 日本 厚生労働省の公衆衛生審議会が1999年に出した「第6次改訂日本人の栄養所要量」で、トランス脂肪酸の摂取量増加が動脈硬化症の危険性増加につながることが指摘されているが規制や表示制度の予定はなし。

トランス脂肪酸の危険性

そして、実際にトランス脂肪酸による危険性はどのようなものが報告されているかというと、

  1. 悪玉コレステロールを増加させ、虚血性心疾患・心筋梗塞のリスクを高める。
  2. アレルギー性の、ぜんそく、鼻炎、アトピー皮膚炎の発症・増悪の原因となる。
  3. 高齢者の痴呆を助長する。

(米国神経学会が発行する学術誌Neurology誌2004年5月11日号に発表された、米国シカゴ近郊に住む65歳以上の住民8500人を長期間追跡した「CHAP」(Chicago Health and Aging Projects)研究の結果。)

 しかし、日本において現在トランス脂肪酸の規制の方向には動いていませんので、自己防衛的に行動しなければなりません。例えば、K社の体脂肪がつきにくいという加工油の商品は5%以上と多くのトランス脂肪酸含みますが、米国への輸出品はトランス脂肪酸の表示義務があるので「トランス脂肪酸0%」の商品を開発しています。しかし、国内ではそのままのトランス脂肪酸を含む商品を販売しています。また、国内のマーガリンにはどれも10%以上の非常に多いトランス脂肪酸が含まれています。特に上記のような動脈硬化、心臓病、高脂血症、アレルギーなどの症状が既にある方は注意が必要です。