心と身体の健康のための養生法・まめ知識

温めよう、心と体

低体温について;体を温めることの効用

「低体温」とは

A:人の体温は正常では、日常的によく使う脇の下の温度で36.5℃ほどです。運動中や発熱時にはこれより高くなりますが、極度に低い温度におかれると体温が奪われ平熱より低くなります。これが冬山での遭難や冬の海での事故などで起こる低体温症です。

しかし、特に極端な寒い状況に置かれていなくても、低い体温状態にあるのが最近話題になっている低体温症、いわゆる「冷え性」の状態です。このような低体温の状態の人は実際に体温を測ると35℃台だったりします。ひどくなると35℃を下回ることもあります。

低体温は視床下部の体温調整中枢や下垂体の機能不全や甲状腺機能不全、アジソン病、低血糖症などにより引き起こされますが、医学的な検査で異常がない場合でも慢性的な低体温状態になっている人は多いと思われます。特に女性の場合、ホルモンのサイクルにより高温期と低温期を繰り返すなど、もともと体温調整が男性に較べ微妙であることも原因のひとつだと考えられます。現在の医学では、特に他に医学的異常がない限り、低体温は自律神経の失調といった感じで治療の対象にはなりませんし、治療方法も確立していません。

低体温により免疫力がおちる

A:低体温は単に体温が低い、体が冷えるといったことにとどまりません。よく、オフィス勤めの女性の方などで「クーラーがきつくてつらい」という方がいますが、そのように体が寒い・冷たいという不快感を訴えなくても低体温であることはいい状態ではありません。低体温がよくない理由は、

1. 免疫力が低下する。
低体温は白血球など免疫に関する細胞の機能低下をもたらす。体温が1℃低下すると40%ほど免疫力が低下するといわれる。
2. 体内酵素の活性が低下する。
体内の生命活動はすべて酵素により行われているが、酵素は40℃ほどで一番効率的に機能することになっているので、体温の低下は生命活動全般の不全を引き起こす。慢性疲労など体調不良を引き起こし、様々な疾患の直接的・間接的な原因になる。
3. ガンの発生を助長する。
ガンは低温状態でより増殖し、高温下では死滅することが分かっている。また、低体温で免疫力も落ちるので二重の意味でガン発生を助長する。

などで、1~3のどれをとっても病気の原因となるものです。病気予防の観点から見ても低体温の状態は望ましいものではなく、その改善が必要だと思われます。すでに何かの病気になっている方はなおさら、低体温の改善が望まれます。

では、どのように低体温を改善できるのでしょうか?

A:低体温を改善する方法をいくつか述べます。

1. 体を温める
体を入浴や足浴などで物理的に温めます。ストレスなどで交感神経優位になっている場合毛細血管などが細くなって血流が悪くなり余計に「冷え」が助長されます。体を温めリラックスし、自律神経の緊張を解くと血流も回復し、低体温の改善にもつながります。入浴では、40℃程度のぬる目のお湯に腰ぐらいまで漬ける半身浴でゆっくりあたためるのがいいでしょう。足湯をするのも効果的です。また、首は体温を高く保つためのポイントなので暖かくし、冷やさないようにするのがコツです。
2. 体を冷やす食べ物を控え、体を温める食べ物を摂る
冷たい飲み物や食べ物を控え、温かいものを摂る、というだけではありません。温度に関係なく体を温める食事、食材があります。
現代では一年を通していろいろな食材や食べ物が手に入るために季節感がなくなっていますが、食養の知識によれば、本来人間は季節に合った旬の食材を食べることにより体温の調整がうまくいっているようです。例えば、夏に取れるナス、キュウリ、トマト、スイカなどは体を冷やし、冬に取れるカボチャ、サトイモ、レンコンなどは体を温めます。また、漢方や中国の伝統でも、ショウガやクズ湯などは体を温めてくれる食材とされます。日常的に摂りやすい食べ物では、黒ゴマのごま塩、ショウガ、みそ汁、番茶、梅干などが体を温めます。砂糖の多い甘い物、ジュース、コーヒーなどは逆に体を冷やします。
3. 体を温める漢方を服用する
必要に応じて、体を温める漢方を服用します。体を温める漢方には、加味逍遥散、桂枝ブクリョウ丸、温経湯、十全大補湯、人参栄養湯、当帰四逆加呉シュウ生姜湯などがありますが、体質や症状をみてその人に合った処方を出します。
4. 早寝早起きで家らでからだのリズムをつくる
5. 午前中に体を動かす
6. 鍼、無血刺絡、など各種施術で生命力の循環を活性化する