中医学漢方症状別治療ご紹介

冷え症の漢方治療

冷え症とは

冷え症は中医の病名ではなく、症状名です。
冷え症とは、患者が自覚するある部位の冷感であり、他者が触れても冷感を感知することが出来る症状です。通常、手足の末端部によく現れるが、時には頭部、胃部、下腹部、肩部、腰背部、仙腸関節の周囲部などにも現れます。冷感と同時に疼痛、しびれ、知覚減退、皮膚色蒼白・つやがない、冷汗などを伴います。
冷え症は末梢循環障害と考えられ、どちらかというと女性に多いです。

冷え症の原因と治療

中医学では冷え症の原因は、陽虚(胃腸機能低下や新陳代謝低下)、瘀血(血流循環障害)、血虚(貧血傾向)、水毒(体内水分の過剰や偏在)、気滞(自律神経失調症)などであります。いずれにしても、血液の流れが悪くなって、熱の運搬が十分でなくなり、全身的あるいは部分的に冷えるわけです。治療するには、血流よくするのが重要です。
冷え症はただ辛いだけでなく、様々な疾患の病態を悪化させる危険もあるので、早めに対処したいものです。

1. 陽虚による冷え(エネルギー代謝が低下して、熱の産生が十分でない新陳代謝低下タイプ)

症 状
全身で冷感を感じる、手足の冷え、寒がり、精神不振、腰膝無力感、尿が薄く多いなど。
原 因
先天虚弱、老化、慢性疾患などにより胃腸機能や新陳代謝が低下して、熱の産生が十分でなくなり、冷え症になります。
治療法
胃腸機能や新陳代謝を高め、エネルギー不足を補い、冷えを治します。
処 方
人参湯・人参湯+附子末・真武湯・八味地黄丸・牛車腎気丸など。

2. 瘀血による冷え(血液の循環が滞っていて、熱の運搬が十分でない血流障害タイプ)

症 状
手足の先が冷え、冷えのぼせ、顔色や口唇が暗色、皮膚の色も悪い、月経痛、月経不順、肩こりなど。
原 因
ストレス・運動不足・外傷などで血流循環に障害が生じて、熱の運搬が十分でなくなり、冷え症になります。
治療法
気を巡り、血流障害を改善し、冷えを治します。
処 方
当帰四逆加呉茱萸生姜湯・桂枝茯苓丸・加味逍遙散・温経湯など。

3. 寒湿による冷え(水分が体内に貯留しているタイプ)

症 状
手足の冷えと重感・冬季や雨天が増悪する、体の痛む、尿量減少、浮腫みやすい、頭痛、頭重感があり、めまい、耳鳴り、吐き気、下痢など。
原 因
なまもの・冷たいもの過食、寒冷と湿気の多い環境での生活または仕事で寒・湿の邪気が体に侵入により、水液代謝・気血の運行を阻害され、冷え症になります。
治療法
寒邪を散らし、湿邪を除去することにより、水液代謝と血液の運行を改善させ、冷えを治します。
処 方
苓姜朮甘湯・桂枝加苓朮附湯・薏苡仁湯など。

4. 血虚による冷え(貧血傾向で冷えるタイプ)

症 状
四肢の冷え、めまい・立ち暗み、目の疲れ、顔・爪・唇色はつやがない、動悸、不眠、月経量は少ないまたは閉経など。
原 因
産後や各種慢性出血により気血が消耗され血虚になると、気血が四肢未端に達することができなくなり、冷え症になります。
治療法
気と血を補い、四肢の血行を改善し、冷えを治ります。
処 方
当帰芍薬散・大防風湯・十全大補湯など。