中医学漢方症状別治療ご紹介

不眠症の漢方治療

不眠症は臨床でよく見かける症状の一つです。なかなか寝付けない・熟睡ができない・眠ってもたびたび目が覚める・いったん目が覚めると再度寝付かれない・重度になると一晩中全然寝ないなどいろいろなタイプがあります。
漢方では、不眠症の原因は心・肝・胆・脾・胃・腎など臓腑機能の乱れと考えます。特に肝・心・脾です。肝は情緒(自律神経)と、心は精神(脳)と、脾は思考(意識)と関連していると考えます。肝・心・脾の乱れ方は、ストレスなどにより機能が亢進すると臓腑の活動を支える血が不足することによる機能低下に2タイプがあります。

不眠症の治療

漢方では不眠だけに注目するではなく、全身の症状を見て治療する事が大切です。

機能亢進するタイプ

肝火上炎・心火亢盛(ストレスなどで異常に感情が高ぶって入眠困難タイプ)

症 状
入眠困難、イライラ・怒りっぽい・目の充血・口が苦い、顔面部が紅潮・のぼせ・口内炎・便秘・尿が濃いなど。
原 因
ストレスや激怒などの精神刺激により、心神に影響を及ぼし、心神不安に落って不眠になります。
治療法
亢進した肝・心の火を瀉し、高ぶった感情が安定させて入眠します。
処 方
龍胆瀉肝湯・柴胡加竜骨牡蛎湯・抑肝散・黄連解毒湯・三黄瀉心湯など。

機能低下するタイプ

肝血不足(抑うつなどで肝血に消耗して入眠困難タイプ)
症 状
体も心も疲れたのに眠れない・夢が多い・怖い夢、驚き易い、動悸・不安、いらつき・ため息が多いなど。
原 因
抑うつや長年の激怒などで肝血を消耗して、魂を収蔵できず、心神不安に落って不眠になります。
治療法
気分をよくし、肝血を補い、魂を回収し、心神が安定させて入眠します。
処 方
酸棗仁湯・加味逍遙散など。
心脾両虚(過度な思慮や心労などによる易覚醒・熟睡障害タイプ)
症 状
寝づきが悪い・夢が多い・眠りが浅い・いったん目が覚めると再度入眠困難、動悸・不安・健忘、顔色が悪い・食欲不振・疲れやすい・軟便など。
原 因
過度な思慮・心労・出血などにより心血を消耗して、心神を栄養できず、心神不安に落って不眠になります。
治療法
気血を補い、心・脾を養い、心神が安定させて入眠します。
処 方
帰脾湯・加味帰脾湯など。