更年期障害とは
更年期は一般に男性では55~60才頃に、女性では45~55才頃に相当します。更年期には、ホルモンバランスの乱れや崩れによって体と心にさまざまな不快症状(不定愁訴)が起します。これを更年期障害といいます。
更年期障害の原因と治療
中医学では、加齢に伴って起る更年期は、腎虚によるものと考えられます。女性の更年期は閉経前後に急激に起る腎虚(女性ホルモン減少)の影響で、気逆(自律神経失調)を伴いやすいのが特徴です。冷え・のぼせ、ホット・フラッシュ(急激にのぼせて顔が赤くなる)、突然の発汗、動悸、イライラ感など更年期によくみられる症状はこの気逆(自律神経失調)による症状です。また女性の更年期では血の異常つまり血虚(貧血傾向)や瘀血(血行不良)を伴う場合も多く見られます。
これに対して、男性の更年期では腎虚は比較的ゆるやかに進み、それに伴って起る気虚の症状が目立ちます。やる気がでなかったり、集中力がなくなったりするのは、そのためです。
治療では、個人の体質、症状に合わせて、補腎(ホルモン補充療法)・理気(抗うつ、心理療法)・活血(血行良くする)などの治療法で崩れた心身のバランスを調え、症状を改善します。
腎虚(ホルモン減少)
腎陽虚(冷えを伴うタイプ)
- 症 状
- 足腰が重だるく痛い、寒がり、手足や下半身が冷え、性機能減退、元気がない、無気力、下肢のむくみ、夜間頻尿・尿が漏れやすい、不安、動悸など。
- 原 因
- 老化、慢性疾患などで体力が衰弱し、腎の陽気が不足し、体を温める力が低下になります。
- 治療法
- 体を温め、腎陽を補い、腎の働きをよくしながら症状を改善します。
- 処 方
- 八味地黄丸・牛車腎気丸・真武湯など。
腎陰虚(手足のほてりを伴うタイプ)
- 症 状
- 足腰が重だるく痛い、手足のほてり、めまい、耳鳴、口やのどの乾き、のぼせ、寝汗、頻尿・尿色が濃い・尿量は少ないなど。
- 原 因
- 老化・過労・慢性疾患などで腎の陰精が不足になり内熱が生じます。
- 治療法
- 内熱を冷まし、腎陰を補い、腎の働きをよくしながら症状を改善します。
- 処 方
- 六味地黄丸・知柏地黄丸など。
気逆(精神神経障害)
肝気鬱結(抑うつ感が強く自律神経失調状態)
- 症 状
- 抑うつ、イライラ、怒りっぽい、不眠。胸脇部の脹って痛む、下腹痛、乳房の脹痛、梅核気、月経異常または、嘔吐、下痢、腹痛など
- 原 因
- 過度な憂うつ、考えすぎ、長期間の精神的な緊張などによって、肝気が鬱滞して、自律神経失調に落ちます。
- 治療法
- 鬱滞した気を巡られて、乱れた肝気を調整し、自律神経失調を改善します。
- 処 方
- 加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蛎湯・四逆散など。
肝火上炎(ストレスなどで異常に感情が高ぶって自律神経過興奮状態)
- 症 状
- 頭痛、肩こり、めまい、耳鳴、目の充血、顔面潮紅、興奮、イライラ、怒りっぽい、不安、不眠など。
- 原 因
- ストレスや激怒などの精神刺激により、自律神経系の過興奮状態に落ちます。
- 治療法
- 亢進した肝の火を瀉し、高ぶった感情が安定させ、自律神経の過興奮状態を改善します。
- 処 方
- 龍胆瀉肝湯・龍胆瀉肝湯+黄連解毒湯・龍胆瀉肝湯+三黄瀉心湯など。
肝陽上亢(高血圧症で不安・イライラがあって自律神経興奮状態)
- 症 状
- 興奮、怒りっぽい、頭痛、肩こり、めまい、耳鳴、目の充血、のどが乾く、顔面潮紅、視力減退・目の乾燥感、筋肉痛、四肢の痺れ感、不眠、多夢など。
- 原 因
- 陰血が不足し、陰が陽を抑えることが出来ないため、肝陽が偏盛して自律神経興奮状態に落ちます。
- 治療法
- 肝の陰血を補い、肝陽の上亢を抑え、上昇した肝火を下降させて、自律神経の興奮状態を改善します。
- 処 方
- 釣藤散・抑肝散・七物降下湯など。
瘀血(血管運動神経障害)
- 症 状
- 舌紫暗、瘀斑、瘀点、冷えのぼせ、頭痛、肩こり、耳鳴り、不眠、健忘など。
- 原 因
- 精神的なストレスや体力の低下などによって、血の流れが悪く、瘀血が体内に停滞し、血管運動神経障害に落ちます。
- 治療法
- 血の流れを良くし、瘀血を取除き、血管運動神経障害を改善します。
- 処 方
- 桂枝茯苓丸・桃核承気湯・当帰芍薬散・女神散・温経湯・サフランなど。
心脾両虚(貧血傾向で自律神経失調状態)
- 症 状
- イライラ、不安、動悸、不眠、多夢、健忘、貧血傾向で、胃腸虚弱、顔色が悪い、食欲不振、軟便、下痢など
- 原 因
- 過度な思慮・心労・出血などにより心血を消耗して、心神を栄養できず、心神不安など自律神経失調状態に落ちます。
- 治療法
- 気血を補い、心・脾を養い、心神が安定させて自律神経失調を改善します。
- 処 方
- 帰脾湯・加味帰脾湯など。